韓国の”現金領収書”に学べること

韓国の”現金領収書”に学べること

前のブログでも紹介したが、韓国では所得税を納めている勤労所得者とその家族は、総給与額の20%を超過する現金使用額の20%が、500万ウォンを限度として年末調整時に所得控除の対象となる『現金領収書』という税制度がある。この制度を導入した目的は店舗等における売上実態の確実な把握にあり、韓国の税収増に大きく貢献したと言われている。

仮に、わが国で同様の制度を適用した場合、どれほどの控除額になるのかを試算してみた。

2019年度家計調査年報によれば世帯平均消費額は389万円で、このうち住居費・光熱費・医療費・教育費・交通費などを除く物販などの一般消費額はおよそ236万円になるようだ。

これに対し、世帯平均年収は約552万円で、年収の20%といえば110万円になる。つまり、これを超える一般消費額は126万円となり、控除額はこの20%つまり一世帯当たり25万円が控除される計算になる。韓国では500万ウォン(約50万円)を上限としているが、上限まで控除される世帯は少ないだろう。

わが国の世帯数はおよそ4900万世帯のため、全世帯で約12兆円の税額控除となるようだ。

さて、12兆円の控除(歳入減)に見合うだけの収税効果が期待できるかが問われることになるが、3つの観点から検討してみる価値はありそうに思える。

1)法人税捕捉の確実性向上

いましきりと問題となっているネット販売に伴う所得把握には極めて効果的ではないだろうか。GAFAに限らず、電子商取引市場は年々拡大の一途をたどっている。とりわけ、コロナによる外出自粛の影響もあって、ネット取引への依存度はかなり増加している。トーゴーサン(給与所得者:10割、自営業者5割、農林水産業者3割の所得捕捉率)などと言われているが、電子商取引市場も含めた所得の確実な捕捉手段の確立は、税収増だけに留まらず納税の公平感の醸成にも大きく寄与すると考えられる。

2)消費意欲の向上に寄与

消費が控除に反映されれば、消費意欲の向上に大きく寄与すると考えられる。仮に控除額の上限を韓国と同等の50万円とすれば、上記試算では25万円だった控除額を限度額まで使うとすれば、さらに同額(126万円相当)までの消費が可能ということになる(もちろん可処分所得の多寡にもよるが)。消費が増えるということは、消費税による歳入(現行では20.3兆円)も増加することになる。つまり、税収面だけ見ても決して見合わない控除額ではないように思えるのだ。さらに、消費意欲の高まりに伴う経済波及効果も極めて大きいと考えられないだろうか。

3)効果的なデジタル活用につながる

税分野は、政府のデジタル化の中でも最も効果的なキラーサービスといえよう。世界の様々な国で実施されている記入済税務申告制度や、就労所得や児童税額控除など様々な生活環境を考慮した税額控除制度など、その応用範囲は極めて広い。今日のようなわが国の前時代的な手作業による給付の仕組みでは、コロナ禍だけでなく様々な時代に即応した適正で公平な負担と給付体制は到底実現することができない。所得をデジタルにより確実に捕捉することは、今後わが国社会の健全性を保つうえで必須の要件だと考える。マイナンバーが導入された当初は、給付付き税額控除の導入が大きな目的とされていたが、結果的に所得が把握できないことが理由で導入が断念されている。デジタル庁が設立され、政府横断的なデジタル政策への道が開けたと政府は胸を張る今だからこそ、真っ先に手を付けるべき改革事項ではないだろうか。

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なお、韓国の税制の仕組みについては『財政の透明化』でも解説しています。


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